17.特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)(平成16年12月1日取りまとめ)

 文部科学省ホームページ「パブリックコメント・意見募集」ページ中、「中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」(中間報告)に関する意見募集の実施について」のページより抜粋

はじめに

我が国社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会に移行しつつある。障害のある児童生徒の教育については、「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」(平成13年10月9日初等中等教育局長決定により設置)が平成15年3月にとりまとめた「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(以下、「協力者会議最終報告」という。)において、障害の種類や程度に応じ特別の場で指導を行う「特殊教育」から、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等(注1)の児童生徒も含め、障害のある児童生徒に対してその一人一人の教育的ニーズを把握し適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図るとともに、その推進体制を整備することが提言された。これを受け平成15年度から開始された国の委嘱事業等を通じ、特別支援教育の取組は、各教育委員会及び学校において積極的に推進され、着実に広がっている。
協力者会議最終報告においては、

  1. 盲・聾・養護学校を障害種にとらわれない学校制度(特別支援学校(仮称))にするとともに、地域の特別支援教育のセンター的機能を有する学校とすること
  2. 小・中学校における特別支援教育の体制を確立するとともに、特殊学級や通級による指導の在り方を見直すこと
  3. 教員等の専門性を強化するための免許制度の改善

などの制度的な課題について、具体的検討の必要性が指摘されている。
本審議会では、初等中等教育分科会に特別支援教育特別委員会を設置(平成16年2月24日)し、同委員会において、特別支援教育を一層推進すべきであるとの認識の下、学校制度等の在り方について検討を重ねてきたが、このたび、その結果を以下のように取りまとめ、「中間報告」として公表することとした。
今後、この「中間報告」に対して各界各層から広く意見をいただき、それらを踏まえつつ、さらに審議を進めることにしたい。本審議会における検討が、特別支援教育の着実な前進につながることを強く期待する。

(注1)LDは学習障害( Learning Disabilities)、ADHDは、注意欠陥/多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)を意味し、「等」はアスペルガー症候群を含む。

第1章障害のある児童生徒等に対する教育の現状と課題

1.現状と課題

これまでの特殊教育においては、障害のある児童生徒等が自立し社会参加する資質を培うため、一人一人の障害の種類や程度に応じて、盲・聾・養護学校(幼稚部・小学部・中学部・高等部)並びに小・中学校の特殊学級及び通級による指導において、きめ細かな教育が行われてきた。近年、養護学校や特殊学級に在籍している児童生徒が増加する傾向にあり、通級による指導を受けている者も平成5年度の制度開始以降増加してきている。現在、特殊教育の対象となる児童生徒等は約21万6千人(全体の約1.3%)であり、このうち、義務教育段階は約17万2千人(全学齢児童生徒数の約1.6%)となっている。
これまで小・中学部における訪問教育(通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し、教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う教育)の対象となっていた障害の重い児童生徒の盲・聾・養護学校への受入れが進むとともに、盲・聾・養護学校(小・中学部)においては、現在、約43.5%(肢体不自由養護学校においては約74.8%)の児童生徒が重複障害学級に在籍している。こうした障害の重度・重複化に伴い、盲・聾・養護学校においては、医療・福祉関係機関と密接に連携した適切な対応が求められている。
また、特殊学級に在籍する児童生徒や通級による指導の対象となっている児童生徒についても、関係機関と連携した学校全体での適切な対応や、障害のない児童生徒との交流及び共同学習の促進、担当教員の専門性向上などが課題となっている。
さらに近年、医学や心理学等の進展、社会におけるノーマライゼーションの理念の浸透等により、障害の概念や範囲も変化している。平成14年に文部科学省が実施した全国実態調査では、小・中学校の通常の学級に在籍している児童生徒のうち、LD・ADHD・高機能自閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている者が約6%程度の割合で存在する可能性(注2)が示されており、これらの児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援は、学校教育における喫緊の課題となっている。

(注2)この調査結果は、医師等の診断を経たものでないため直ちにこれらの障害と判断することはできず、あくまで可能性を示したものである。

2.障害者施策を巡る国内外の動向

近年、障害者施策を巡る国内外の状況は大きく進展してきている。
1992(平成4)年に国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が決議した「アジア太平洋障害者の十年」の最終年に当たる2002(平成14)年、この「十年」がESCAP総会において我が国の主唱によりさらに10年延長され、同年10月に滋賀県で開催されたハイレベル政府間会合において、すべての人のための障壁のないかつ権利に基づく社会に向けた行動課題「びわこミレニアムフレームワーク」が採択された。
また、「アジア太平洋障害者の十年」が始まることを契機として、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図ることを基本理念として、心身障害者対策基本法の一部改正により、平成5年12月に障害者基本法が公布された。障害者基本法は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し障害者の福祉を増進することを目的としているが、平成16年6月に一部改正され、基本的理念として障害者に対して障害を理由として差別その他の権利利益を侵害してはならない旨が規定されたほか、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の積極的推進による相互理解の促進についても規定がなされた。
さらに、平成14年12月、平成15年度を初年度として10年間を見通した障害者関連施策の基本的な方向を盛り込んだ新しい「障害者基本計画」が閣議決定された。障害者基本計画は、新長期計画における「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」の理念を継承するとともに、障害者の社会への参加、参画に向けた施策の一層の推進を図るため、10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めたものであるが、この中において、障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うとともに、学習障害、注意欠陥/多動性障害、自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応することが基本方針として盛り込まれた。
また、現在、LD・ADHD・高機能自閉症等に関して、早期発見、早期療育、教育、就労等に対する国及び地方公共団体等の責務を明らかにすること等を目的とした議員立法(「発達障害者支援法案」)の検討が進められるなど、発達障害者・児に対する総合的な支援の充実が重要な政策課題となっている。

第2章特別支援教育の理念と基本的な考え方

協力者会議最終報告では、特殊教育の果たしてきた役割や障害のある子どもの教育をめぐる諸情勢の変化を踏まえつつ、「特別支援教育」の理念と基本的な考え方が提言されている。
これまでの「特殊教育」では、障害の種類や程度に応じて盲・聾・養護学校や特殊学級といった特別な場で指導を行うことにより、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点が置かれてきた。
「特別支援教育」とは、障害のある児童生徒等の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、児童生徒等一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導や必要な支援を行うものである。
また、すでに述べたとおり、現在、小・中学校において通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支援が喫緊の課題となっており「特別支援教育」においては、特殊教育の対象となっている児童、生徒に加え、これらの児童生徒に対しても適切な指導及び必要な支援を行うものである。
すでに、文部科学省においては、平成13年の組織再編により「特別支援教育課」が設置されており、都道府県教育委員会等の組織においても「特別支援教育」を用いる例が増加してきている。
また、平成15年度から開始された全都道府県教育委員会に対する委嘱事業等を通じて、各都道府県等では、「特別支援連携協議会「専門家チーム」の設置」、「巡回相談員」の実施などが、また、各学校では、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名、「個別の教育支援計画」の策定(注3)などが推進され、特別支援教育の実施体制整備が着実に進められている。
今後、特別支援教育の理念と基本的考え方の一層の普及・定着を図るため、学校教育法等における「特殊教育」の用語を改めることを含め、関係法令への位置付けを検討する必要がある。

(注3) 「個別の教育支援計画」とは、障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な支援を行うことを目的として策定されるもので、教育のみならず、福祉、医療、労働等の様々な側面からの取組を含め関係機関、関係部局の密接な連携協力を確保することが不可欠であり、教育的支援を行うに当たり同計画を活用することが意図されている。
なお、「新障害者プラン」(障害者基本計画の重点施策実施5か年計画)の中では、盲・聾・養護学校において「個別の支援計画」を平成17年度までに策定することとされている。この「個別の支援計画」と「個別の教育支援計画」の関係については、「個別の支援計画」を関係機関等が連携協力して策定するときに、学校や教育委員会などの教育機関等が中心になる場合に、「個別の教育支援計画」と呼称しているもので、概念としては同じものである。

このことは、従来の特殊教育が果たしてきた役割や実績を否定するものではなく、むしろ、これを継承・発展させていこうとするものである。したがって、特別支援教育は、これまで特殊教育の枠組みの下で培われてきた教育水準や教員の専門性が維持・向上できるような方向で推進されることが必要である。
また、LD・ADHD・高機能自閉症等の状態を示す児童生徒等が、いじめの対象となったり不登校になる場合があり、それが二次的な障害を引き起こしているとの指摘もあることから、特別支援教育の推進により、いじめや不登校を未然に防止する効果も期待される。さらに、これらの児童生徒等については、障害に関する医学的診断の確定にこだわらず、常に教育的ニーズを把握しそれに対応した指導等を行う必要があるが、こうした考え方が学校全体に浸透することにより、障害の有無にかかわらず、当該学校における児童生徒等の確かな学力の向上や豊かな心の育成にも資するものと言える。こうしたことから、特別支援教育の理念と基本的考え方が普及・定着することは、現在の学校教育が抱えている様々な課題の解決や改革に大いに資すると考えられることなどから、積極的な意義を有するものである。
我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会である。その実現のため、障害者基本法や障害者基本計画に基づき、ノーマライゼーションの理念に基づく障害者の社会への参加・参画に向けた総合的な施策が政府全体で推進されており、その中で、学校教育は重要な役割を果たすことが求められている。その意味で、特別支援教育の理念や基本的考え方が、学校教育関係者のみならず国民全体に共有されることを目指すべきである。

第3章盲・聾・養護学校制度の見直しについて

1.障害種別を超えた学校制度について

(1)基本的な考え方

今後、障害のある児童生徒等一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育を進めていくうえで、現在の盲・聾・養護学校の制度を様々な教育的ニーズに適切に対応し得るものとする必要がある。
特に、第1章で述べたように、現在、盲・聾・養護学校に在籍する児童生徒のうち、半数近く(肢体不自由養護学校においては約4分の3)の児童生徒が重複障害学級に在籍するなど、障害の重度・重複化への対応が喫緊の課題となっている。
このような課題に対応するため、各都道府県等では、複数の障害に対応する併設型養護学校の設置や、児童生徒数の推移等を踏まえた盲・聾・養護学校の配置見直しなどに関する検討が進められている。現在推進されている地方分権の進展も踏まえれば、国の制度をより柔軟なものとすることによって、こうした工夫や努力を促進することも重要である。
このため、協力者会議最終報告で提言されているとおり、現在の盲・聾・養護学校を、障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)とすることが適当である。
これにより、各都道府県等において、複数の障害に対応した学校を効果的に設置することが容易となることから、地域の実情に応じたきめ細かい教育の一層の充実に資することが期待される。

(2)特別支援学校(仮称)の内容

  1. 対象となる障害種別について
    特別支援学校(仮称)は、基本的には現在の盲・聾・養護学校の対象となっている5種類の障害種別(盲・聾・知的障害・肢体不自由・病弱)及びこれらの重複障害に対応した教育を行う学校制度とすることが適当である。
    特別支援学校(仮称)の制度は、各都道府県等において、複数の障害に対応した教育を行う学校の設置を可能とするものであるが、これまでのように特定の障害に対応した学校を設けることも可能である。具体的にいかなる障害に対応した教育を行う学校とするかについては、地域における教育に対するニーズ等に応じて弾力的に判断されることとなる。
    これに関連し、協力者会議最終報告では、特別支援学校(仮称)において、例えば「視覚障害部門」、「知的障害部門」等の「教育部門」を設けることが提言されている。この「教育部門」は、各障害種別ごとの専門性を確保する観点から、これを設けることが有効であると考えられる。複数の障害に対応した併設型養護学校の中には、固定的組織としての部門を設けることなく柔軟な運営を行っている例があり、特別支援学校(仮称)では児童生徒等の障害に応じた弾力的な教育課程や指導方法による教育の実施が求められることも踏まえると、その具体的内容はできる限り設置者等に委ねることが適当である。
    対象とする障害種別に関し、LD・ADHD・高機能自閉症等については、小・中学校等における特別な指導内容・方法が十分に確立されていない現状にかんがみ、これらの児童生徒等に対する適切な指導や必要な支援の在り方についても、特別支援学校(仮称)が、後述のセンター的機能の発揮等を通じて先導的役割を果たすことが期待される。
    なお、自閉症については、その特別な指導内容・方法に着目し、知的障害養護学校において自閉症のある児童生徒等の学級を設ける運用も行われており、また、平成16年度から筑波大学附属久里浜養護学校が自閉症のある幼児児童を受け入れる学校に転換したところである。今後、これらの実績も踏まえ、知的障害と自閉症を併せ有する児童生徒等に対し、この2つの障害の違いを考慮しつつ、障害の特性に応じた対応について、引き続き研究を進める必要がある。
  2. 配置について
    いかなる形態の特別支援学校(仮称)をどのように配置していくかについては、都道府県等において、地理的な状況や各障害種別ごとの教育的ニーズの状況など、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かい検討に基づいて判断されることになるが、その際、次のような視点についても十分考慮される必要がある。
    ア.一人一人の教育的ニーズに対応する特別支援教育の理念や、障害の重度・重複化に対応するという特別支援学校(仮称)の趣旨に照らし、特別支援学校(仮称)は、可能な限り複数の障害に対応できるようにするべきとの視点
    イ.障害のある児童生徒等が、できる限り地域の身近な場で教育を受けられるようにするべきとの視点
    ウ.障害の特性に応じて、同一障害の児童生徒等による一定規模の集団が学校教育の中で確保される必要があるとの視点
    エ.学校の形態に応じて、各障害種別ごとの専門性が確保され、専門的指導により児童生徒等の能力を可能な限り発揮できるようにする視点
    オ.特別支援教育のセンター的機能が効果的に発揮されるようにする視点
  3. 名称について
    特別支援学校(仮称)が制度として発足した場合、特別支援学校(仮称)の名称が普及・定着するまでには一定の期間を要すると考えられる。一方、これまでの各障害種別における専門的指導の蓄積や、私立の学校が建学の精神に基づく特色ある教育活動を展開していることなども踏まえれば、主として特定の障害に対応する形態の特別支援学校(仮称)については、引き続き「盲学校」、「聾学校」又は「養護学校」と称することができるようにすることを含めて検討することが適当である。
  4. 教育課程について
    特別支援学校(仮称)においては、障害のある児童生徒等一人一人の教育的ニーズに対応した効果的かつ弾力的な教育課程編成が期待される。特別支援学校(仮称)の学習指導要領等は、現在の盲・聾・養護学校の学習指導要領等の内容を見直して定められることとなるが、障害種別を超えたグループ別の教育課程編成の可能性や、平成17年度までに策定することとされている「個別の教育支援計画」との関係を検討することも必要であり、引き続き検討を行うことが適当である。

2.特別支援教育のセンター的機能について

(1)基本的な考え方

今後、地域において特別支援教育を推進する体制を整備していくうえで、特別支援学校(仮称)は中核的な役割を担うことが期待される。特に、小・中学校に在籍する障害のある児童生徒について、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒を含め、その教育的ニーズに応じた適切な教育を提供していくためには、特別支援学校(仮称)が、教育上の高い専門性を生かしながら地域の小・中学校を積極的に支援していくことが求められる。
これまでも、盲・聾・養護学校の学習指導要領等において、盲・聾・養護学校は、「地域の実態や家庭の要請等により、障害のある児童生徒等又はその保護者に対して教育相談を行うなど、各学校の教師の専門性や施設・設備を生かした地域における特殊教育に関する相談のセンターとしての役割を果たすよう努めること」と規定されており、すでに様々な形で、地域の小・中学校教員や保護者に対する教育相談等の取組が進められている。
今後、特別支援学校(仮称)の機能として、小・中学校等に対する支援などを行う地域の特別支援教育のセンター的機能を、明確に位置付けることを検討する必要がある。

(2)センター的機能の具体的内容

いかなる形態の特別支援学校(仮称)をどのように配置していくかについては、各都道府県等において検討されるべきものであるため、センター的機能についても、すべての特別支援学校(仮称)が制度的に一律の機能を担うこととするのは現実的ではなく、各学校の実情に応じて弾力的に対応できるようにすることが適当である。
なお、盲・聾・養護学校における先進的な事例を踏まえ、特別支援学校(仮称)に期待されるセンター的機能を例示すれば、以下のとおりである。

  1. 小・中学校等の教員への支援機能
  2. 特別支援教育等に関する相談・情報提供機能
  3. 障害のある児童生徒等への指導機能
  4. 医療、福祉、労働などの関係機関等との連絡・調整機能
  5. 小・中学校等の教員に対する研修協力機能
  6. 地域の障害のある児童生徒等への施設設備等の提供機能

このうち、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育等に関する相談・情報提供機能、障害のある児童生徒等への指導機能、医療、福祉、労働などの関係機関等との連絡・調整機能については、具体的には以下のような内容が考えられる。

小・中学校等の教員への支援機能については、個々の児童生徒の指導に関する助言・相談のほか、個別の教育支援計画の策定に当たっての支援などが考えられる。

特別支援教育等に関する相談・情報提供機能については、地域の小・中学校等に在籍する児童生徒等や保護者への相談・情報提供のほか、幼稚園等における障害のある幼児への教育相談が考えられる。これまでにも、盲学校及び聾学校の幼稚部では、乳幼児期の子どもを対象とした早期からの教育相談を実施している場合があるが、障害者基本計画において乳幼児期からの一貫した相談支援体制の構築を図ることとされていることも踏まえ、今後、それぞれの地域の実情に応じて、こうした取組を広げていくことが期待される。

障害のある児童生徒等への指導機能については、小・中学校等の児童生徒等を対象とする通級による指導や『いわゆる「巡回による指導」(後述)』が考えられる。これらの実施に当たっては、小・中学校等との十分な連携が必要である。これまでにも、聾学校を中心に、このような指導が実施されている場合があり、今後、それぞれの地域の実情に応じて、こうした取組を広げていくことが考えられる。

医療、福祉、労働などの関係機関等との連絡・調整機能については、個別の教育支援計画の策定に当たり、医療、福祉、労働などの関係機関等との連絡・調整を行うことなどが考えられる。
なお、障害者基本法において、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進める旨が規定されたことを踏まえ、今後、盲・聾・養護学校(特別支援学校(仮称))に在籍する児童生徒と、地域の小・中学校等の児童生徒との交流及び共同学習の機会が適切に設けられることを促進するべきである。

(3)センター的機能が有効に発揮されるための体制整備

特別支援学校(仮称)がセンター的機能を発揮するためには、特別支援学校(仮称)間での適切な連携が行われるとともに、多くの特別支援学校(仮称)の管理運営を担う都道府県教育委員会と、小・中学校の管理運営を担う市町村教育委員会とが十分に連携し、小・中学校が円滑に支援を受けられるような環境を醸成していくことが重要である。その際、地域の実情に応じて、小・中学校の特殊学級等が特別支援学校(仮称)と連携・協力して、センター的機能の一翼を担う場合もあり得ることに留意する必要がある。
障害のある児童生徒等の支援については、医療、福祉、労働関係機関等との適切な連携も重要であるが、このためには、関係行政機関等の相互連携の下で広域的な地域支援のための有機的なネットワークが形成されることが有効である。すでに各都道府県レベルで「障害保健福祉圏域」や教育事務所単位での支援地域の設定などが行われているが、この中に特別支援学校(仮称)のセンター的機能が適切に位置付けられる必要がある。その際、「新障害者プラン」(障害者基本計画の重点施策実施5か年計画)において、平成16年度までに策定することとされている「地域において一貫して効果的な相談支援を行う体制を整備するためのガイドライン」の内容にも留意する必要がある。
特別支援学校(仮称)がセンター的役割を有効に発揮するためには、高い専門性を有する教員が適切に養成・配置されることが必要であり、任命権者である各都道府県教育委員会等においては、人事上の配慮が望まれる。また、各学校においては、校長のリーダーシップの下に、それぞれに求められる役割に応じて目的・目標を明確にして、組織や運営の在り方を再構築し、その成果を定期的に評価するなど一層効果的な学校経営が求められる。さらに、センター的機能のための分掌や組織(例えば「地域支援部」など)を設けて校内の組織体制を明確にすることが望ましい。

第4章小・中学校における制度的見直しについて

1.基本的な考え方

近年、小・中学校において、通常の学級に在籍しているLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援が喫緊の課題となっている。また、特殊学級に在籍する児童生徒や通級による指導の対象となっている児童生徒についても、関係機関と連携した適切な対応等が求められている。
さらに、平成16年6月4日に公布された障害者基本法の一部改正法により、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない旨(第14条第3項)が規定された。
これまで、小・中学校における障害のある児童生徒の教育は、主として特殊学級等において行われてきたが、今後は、これらの課題を含め、学校全体の課題として取り組んでいくことが求められる。
このため、小・中学校における特別支援教育の推進に関して、通常の学級も含めた教育活動全体での適切な推進が図られるよう、関係法令等における位置付けについて検討するとともに、教育委員会や学校における推進体制の整備を促進することが必要である。
また、小・中学校における特別支援教育の推進に当たっては、障害のある児童生徒の保護者はもとより、通常の学級を担当する教員や、障害のない児童生徒及びその保護者の理解と協力が不可欠となるため、国及び各教育委員会においては、研修や広報活動等を通じた普及啓発を積極的に推進することが重要である。

2.LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支援の必要性

協力者会議最終報告においては、通常の学級に在籍しているLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒について、これらの定義と判断基準(試案)等を示しつつ、適切な指導及び必要な支援を行うための小・中学校の体制整備の具体的在り方が提言された。
これを受け、文部科学省においては、平成16年1月に教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)を作成し、すべての教育委員会及び小・中学校に配布するとともに、平成15年度から開始された全都道府県教育委員会に対する委嘱事業などを通じ、教育委員会に「専門家チーム」を設置することや、すべての小・中学校において「特別支援教育コーディネーター」(後述)を指名すること等を内容とする推進体制整備が行われることを目指している。
通常の学級に在籍しているこれらの児童生徒への指導及び支援は、学校教育における喫緊の課題となっており、引き続き小・中学校の体制整備を推進することが必要である。その際、厚生労働省における発達障害者支援施策との連携を図るとともに、小・中学校の教職員や保護者に対する理解と啓発を一層推進することが重要である。また、医師をはじめとする専門家の絶対数が不足していることから、その養成・確保の方策についても検討されることを期待したい。
LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒の状態像は様々であり、周囲の環境によって変化することも多いため、個別的かつ弾力的な指導及び支援が必要となる。このため、各学校における教育課程の実施の形態についても、通常の学級における教員の適切な配慮、ティーム・ティーチングの活用、個別指導や学習内容の習熟の程度に応じた指導等の工夫などに加え、必要に応じて、通常の学級を離れた特別の場での指導及び支援を受けられるようにすることが有効である。
このため、後述のとおり、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する特別の場での指導及び支援を制度的に位置付けることを含めて、現行制度の見直しを行うことが必要である。その際、特別の教育課程を編成して指導することが適当な者の範囲・要件や、その具体的な指導内容・方法について国立特殊教育総合研究所における研究等を推進しつつ、検討を進める必要がある。

3.特殊学級等の見直し

全国の小・中学校の特殊学級の平均在籍者数は約2.8人(平成15年5月1日現在)となっているが、障害種別あるいは都道府県別の平均在籍者数には幅があり、その運用実態は様々となっている。
特殊学級には、すべての時間を当該特殊学級で過ごし、教育を受ける必要のある児童生徒がいる一方で、相当の時間を通常の学級との交流教育という形で障害のない児童生徒とともに過ごすことが可能な児童生徒もみられ、その実態は、児童生徒の障害の種類や程度、学校の実情等に応じて様々である。
また、特殊学級を担当する教員については、当該学級に在籍する児童生徒への指導に加え、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対する通級による指導と類似した支援やいわゆる「巡回による指導」を行ったり、通常の学級を担当する教員に対する相談支援を行ったりしている例もみられる一方で、十分な専門性を有しない教員が配置されるなど、必ずしも効果的に活用されていない例もみられる。
さらに、通級による指導については、指導時間数及び対象となる障害が限定されており、特別支援教育を推進する観点から、より弾力的な対応ができるようにする必要がある。
協力者会議最終報告においては、「特殊学級や通級指導教室について、その学級編制や指導の実態を踏まえ必要な見直しを行いつつ、障害の多様化を踏まえ柔軟かつ弾力的な対応が可能となるような制度の在り方について具体的に検討していく必要がある」とともに、「制度として全授業時間固定式の学級を維持するのではなく、通常の学級に在籍した上で障害に応じた教科指導や障害に起因する困難の改善・克服のための指導を必要な時間のみ特別の場で行う形態(例えば「特別支援教室(仮称)」)とすることについて具体的な検討が必要」との提言が行われた。
「特別支援教室(仮称)」の構想が目指すものは、各学校に、障害のある児童生徒の実態に応じて特別支援教育を担当する教員が柔軟に配置されるとともに、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒も含め、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍しながら、特別の場で適切な指導及び必要な支援を受けることができるような弾力的なシステムを構築することであると考えられる。
この考え方は、小・中学校における特別支援教育を推進するうえで、極めて重要であり、また、すでに特殊学級と通常の学級との交流教育という形で弾力的な運用が行われている例があることも踏まえれば、「特別支援教室(仮称)」の構想が目指しているシステムを実現する方向で、制度的見直しを行うことが適当である。
しかしながら、現行の特殊学級等を直ちに廃止することに関しては、障害の種類によっては固定式の学級の方が教育上の効果が高いとの意見があることや、重度の障害のある児童生徒が在籍している場合もあること、さらには特殊学級に在籍する児童生徒の保護者の中には固定式の学級が有する機能の維持を望む意見があることなどに配慮する必要がある。
また、特殊学級等の各都道府県等における運用や在籍する児童生徒の実態に幅がある中で、場や空間を指して用いられることが多い「教室」を制度化するに際しては、現行の「学級」編制を基本とする公立学校の教職員配置システムとの関連を検討することが必要である。
さらに、特殊学級や通級による指導を担当する教員には障害のある児童生徒の教育に係る専門性が求められるが、今後、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒への指導及び支援を含め、特別支援教室(仮称)の構想を実現するためには、担当教員のより高い専門性が確保されることが必要である。
以上を踏まえ、「特別支援教室(仮称)」の構想を実現するための制度的見直しについては、研究開発学校やモデル校などによる先導的な取組を早急に開始するとともに、固定式の学級が有する機能を維持できるような制度の在り方や、教職員配置及び教員の専門性の確保の在り方について、具体的に検討を進めることが適当である。
また、新たな制度の円滑な実施を図る観点から、以下のような現行制度の弾力化等を行うことも併せて検討するとともに、小・中学校における総合的な体制整備(後述)を着実に進める必要がある。こうした弾力的な取組みが広がっていくことにより、「特別支援教室(仮称)」の構想の実現につながっていくものと考えられる。

ア.特殊学級における交流及び共同学習の促進と担当教員の活用

小・中学校の学習指導要領では、「特殊学級又は通級による指導については、教師間の連携に努め、効果的な指導を行うこと」や、障害のない児童生徒と障害のある児童生徒との「交流の機会を設けること」が定められているが、その趣旨が徹底されていない場合もみられる。
障害者基本法において、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進める旨が規定されたことも踏まえ、特殊学級を担当する教員と通常の学級を担当する教員の連携の下で、特殊学級に在籍する児童生徒が通常の学級で学ぶ機会が適切に設けられることを一層促進すべきである。
また、交流及び共同学習の機会が充実されるとともに、特別支援学校(仮称)のセンター的機能が発揮されることを前提とすれば、特殊学級を担当する教員が、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒への指導及び支援も含め、これまで以上に特別支援教育に関する多様な役割を担うことも可能となると考えられる。
以上を踏まえ、小・中学校において障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援が効果的に行われるようにするため、特殊学級を担当する教員の一層の活用を進めることが必要である。
また、特殊学級や通級による指導を担当する教員について、高い専門性を有する者が適切に養成・配置されることが必要であり、任命権者である各都道府県教育委員会等において、人事上の配慮が望まれる。

イ.通級による指導の見直し

通級による指導については、指導時間数の制限を緩和することや、対象となる障害の種類にLD・ADHDを加えること(高機能自閉症等については現在でも必要に応じて対象とすることが可能)を含め、特別支援教育の観点から弾力的な運用が可能となる方向で見直しを行う必要がある。
通級による指導の形態には、学校内での実施だけでなく、児童生徒が他の小・中学校や盲・聾・養護学校に出向く形態や、教員が他の学校を巡回訪問する形態もみられる。今後、特別支援学校(仮称)のセンター的機能が発揮されるとともに、特殊学級担当教員の活用が促進されることによって、各地域の実情に応じて、こうした多様な形態による運用が広がることが期待される。

ウ.いわゆる「巡回による指導」について

障害のある児童生徒に対する指導及び支援の一つとして、小・中学校や盲・聾・養護学校の教員が複数の学校を巡回訪問して指導を行う形態がみられる。このいわゆる「巡回による指導」については、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する教育課程外の個別指導として、週に1回未満の頻度で行われている例がある。
いわゆる「巡回による指導」のうち、定期的に実施されており、かつ、教育課程の一部として位置付け得る内容であるものについては、その制度的な位置付けを明確化する必要がある。その際、いわゆる「巡回による指導」を受け入れる学校における授業時間の調整、指導に当たる教員の身分、円滑な実施を確保するための仕組みについても併せて検討を行う必要がある。
また、実施形態については、通級による指導と同様に、特別支援学校(仮称)のセンター的機能や特殊学級担当教員の活用も含め、多様な形態による弾力的運用を可能とすることが適当である。

エ.その他

いわゆる院内学級については、現行制度の維持を前提としつつ、短期間の在籍であっても学籍移動の手続が必要となることや、児童生徒数の変動を適切に反映した学級編制を行うことが困難であるなどの課題が指摘されていることから、制度の運用実態を見きわめつつ、その在り方について調査研究を行う必要がある。

第5章教員免許制度の見直しについて

平成14年2月の本審議会の答申「今後の教員免許制度の在り方について」では、障害のある児童生徒等の重度・重複化等の課題に対応するため、「現在、盲・聾・養護学校の別となっている特殊教育諸学校免許状の総合化については、早急に実現すべき課題として、教員養成部会に専門委員会を設けて具体的な検討を進める」旨が示された。
これを踏まえ、教員養成部会に「特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループ」が設置され、盲・聾・養護学校教員の免許制度について、障害の種類に対応した専門性を確保しつつ、多様な障害に対応することが可能となることを目指し、免許制度の改善について検討が行われてきた。
本審議会としては、協力者会議最終報告を踏まえた制度的見直しに関連する以下の事項も含め、引き続き教員養成部会において総合的な審議を行い、その結果を答申に反映することが適当である。

  1. 特別支援学校(仮称)の教員免許制度について
    特別支援学校(仮称)の教員には、障害の種類に応じた優れた専門性が求められる一方、多様な児童生徒等の受入れやセンター的機能の発揮により、様々な障害に関する幅広く基礎的な知識も必要となる。こうした資質能力を確保するための特別支援学校(仮称)の教員免許制度について検討する必要がある。
  2. 小・中学校の特別支援教育に携わる教員の免許制度について
    現行の教員免許制度においては、特殊学級や通級による指導を担当する教員には特殊教育免許状の保有は義務付けられていないが、今後、特別支援教育を担当する教員については、特別支援教育に関する高い専門性と幅広い資質能力が求められるようになることから、その在り方について検討する必要がある。

第6章関連する諸課題について

1.総合的な体制整備に関する課題について

障害者基本計画においては、障害者の社会への参加や参画に向けた施策の一層の推進を図ることを目的に、障害のある者一人一人のニーズに対応して総合的かつ適切な支援を行うことを基本方針としつつ、乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うこと等が示されている。
これを踏まえ、協力者会議最終報告では、学校教育における体制整備の方向性として、関係機関の有機的な連携と協力、「個別の教育支援計画」、「特別支援教育コーディネーター」(注4)などの具体的な内容が提言された。

(注4)協力者会議最終報告においては、小・中学校又は盲・聾・養護学校において、関係機関との連携協力の体制整備を図るために、各学校において、障害のある児童生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識及びカウンセリングマインドを有する学校内及び関係機関や保護者との連絡調整役としてのコーディネーター的な役割を担う者として提言されている。

文部科学省においては、全都道府県教育委員会に対する委嘱事業等を通じ、平成19年度を目標として、全ての小・中学校において総合的な支援体制を整備することを目指している。
この委嘱事業においては、各都道府県等のレベルで、「特別支援連携協議会」や「専門家チーム」の設置、「巡回相談員」による小・中学校への指導・助言などが推進されており、また、各学校のレベルでは、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名、「個別の教育支援計画策定委員会」の設置などが推進されている。
引き続き、こうした体制整備を推進するとともに、その進捗状況を踏まえつつ、以下のような制度的課題についても検討する必要がある。

  1. 個別の教育支援計画及び個別の指導計画について
    個別の教育支援計画については、いわゆる「新障害者プラン」(障害者基本計画の重点施策実施5か年計画)において、盲・聾・養護学校において平成17年度までに策定することとされている。今後、小・中学校も含めた策定の推進を検討するとともに、関係機関と連携した効果的な運用方法を確立する必要がある。
    また、今後の運用状況を踏まえつつ、「個別の指導計画」と併せて学習指導要領等への位置付けを行うことや、就学事務における取扱いなどを検討する必要がある。
  2. 特別支援教育コーディネーターについて
    協力者会議最終報告及び平成16年1月に文部科学省より公表された「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」においては、すべての盲・聾・養護学校及び小・中学校において、特別支援教育コーディネーターを指名し、校務分掌に明確に位置付けることが求められている。今後は、引き続き研修等を通じた人材養成を推進しつつ、可能な限りコーディネーターとしての校務に専念できるよう必要な配慮が行われるようにすることや、いじめや不登校等に対応する小・中学校の生徒指導体制の整備と関連付けた活用も含め、一層の効果的・効率的運用を促す必要がある。また、盲・聾・養護学校(特別支援学校)においては、センター的機能を担う中核的存在としてコーディネーターが適切に位置付けられるようにすることも重要である。これらを含め、今後の各学校における運用状況を踏まえつつ、その在り方について引き続き検討する必要がある。

2.国の役割について

国においては、以上のような制度的な見直し等を進めるに当たり、各都道府県・市町村の教育委員会や各学校に対して、見直し等の全体像や移行スケジュールを含む明確な方針を適時・適切に提示することにより、円滑な移行が図られるようにすることが必要である。
また、特別支援教育にかかる制度的な見直し等を進めるに際しては、義務教育費国庫負担制度の改革の動向等を踏まえつつ、教職員配置等の所要の条件整備についても併せて検討する必要がある。
さらに、特別支援教育を取り巻く状況の変化等を踏まえ、政策的ニーズの高い課題や喫緊の課題に対応した専門的な研究・研修を一層充実していくことが、国の重要な責務であり、国立特殊教育総合研究所における戦略的・機動的な事業の展開が必要である。また、その際、大学等の関係機関との連携協力による取組が重要である。
なお、特別支援教育の推進など障害のある児童生徒に対する支援については、例えば、スポーツ活動などを通じて自立及び社会参加を支援する地域の取組や、障害のある子どもの放課後のケアなど厚生労働省等における関連施策と十分連携しながら推進することが望まれる。

3.特別支援教育の普及啓発について

今回の制度的見直し等を進めるに当たっては、特別支援教育の理念と基本的考え方が、盲・聾・養護学校の校長はもちろんのこと、小・中学校等の校長をはじめとする学校のすべての教職員はもとより、国民一般に広く理解・共有されるようにすることが重要である。
特に、小・中学校において、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の機会が充実されるようにすることや、特別支援教室(仮称)の構想を実現するためには、通常の学級を担当する教員や、障害のない児童生徒及びその保護者の理解と協力が不可欠となる。このため、国及び各教育委員会においては、研修や広報活動等を通じた普及啓発を積極的に推進すべきである。
なお、障害のある幼児児童の小・中学校への就学や個別の教育支援計画の策定については、十分な制度の周知を図りつつ、保護者の理解を得られるような形で進めていく必要がある。

4.後期中等教育等における特別支援教育の在り方について

今後、高等学校に在籍しているLD・ADHD・高機能自閉症等の生徒に対する指導及び支援の在り方や、養護学校(特別支援学校(仮称))高等部の充実方策など、後期中等教育における特別支援教育の推進に係る諸課題について、早急な検討が必要である。特に、障害者の自立と社会参加を支援する観点から、中学校や関係機関と連携しつつ、就労を目指した職業教育の充実や高等教育機関での修学支援を図ることは重要な課題である。
さらに、LD・ADHD・高機能自閉症等への対応については、幼児段階での早期発見・早期支援が重要であることから、幼稚園及び保育所との連携を考慮しながら、幼児段階における特別支援教育の推進の在り方についても検討が必要である。

5.その他

現在の学校教育法における特殊教育の規定にある「欠陥」や「心身の故障」等の語については、特別支援教育の理念にふさわしくないのではないかとの考え方もあることから、特別支援教育への転換に伴う法令上の用語等の見直しについて法制的な検討を行う必要がある。

参考資料(略)

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18宮城県障害児教育将来構想(平成17年7月策定)

宮城県ホームページの「宮城県教育庁障害児教育室」のページより抜粋。

はじめに

(前略)
今回策定した「宮城県障害児教育将来構想」は,「障害の有無によらず,全ての子どもが地域の小・中学校で共に学ぶ教育を子どもや保護者の希望を尊重し展開する。」という基本理念の下に,障害のある子どもと障害のない子どもが「共に学ぶ」教育環境づくりや「生きる力」を培う教育を進めていくための基本的な方向性を示すものです。そのため,基本理念の実現を目指して,教育現場における現状と課題を的確に把握し,社会状況の変化,事業の進捗状況等に応じて,施策を柔軟に見直しながら推進していくこととしております。

1基本理念

障害の有無によらず,全ての子どもが地域の小・中学校で共に学ぶ教育を子どもや保護者の希望を尊重し展開する。

◇ これまでの障害児教育は,障害のある子どもに対して,その子に応じた手厚くきめ細かな教育を展開しながら,学ぶ場所を整備拡充してきた歴史があります。
このことは,障害によって生ずる教育的ニーズに応え,障害のある子どもの発達や成長に大きく寄与してきましたが,このことが結果的に,地域や学校において障害のある人と障害のない人が共に活動することや様々な経験・体験を積むことを少なくしてきたことも否めません。

◇ 基本的に人は,社会の中でのみ人間的に生きることができ,また,社会の中で他者との関係を結び,人と人とが互いの存在を積極的に受容し,支え合い,共生することによって,より豊かな生き方が可能になるのではないでしょうか。
学校教育終了後は,障害のある子どもも障害のない子どもも,同じ地域社会の中で生活することになります。地域社会の中で,障害のある子どもも障害のない子どもも,自己選択と自己決定の下に様々な人々と関わりながら社会活動に参加・参画し,共に活動する
ことによってお互いの存在を受容し,支え合うという経験を通して,社会は様々な人々から構成されていることを学んでいくことが必要です。そして,その土台作りを,学校教育も担っていく必要があるのではないでしょうか。
このように考えると,これまでの障害児教育の成果を踏まえながら,義務教育段階においても,可能な限り,障害のある子どもと障害のない子どもも,地域の小・中学校で「共に学ぶ」ことは人間形成の上で極めて重要であります。

◇ 以上のことから,近年の障害児教育の動向等を見据え,本県の障害児教育を推進するに当たっての基本理念を,「障害の有無によらず,全ての子どもが地域の小・中学校で共に学ぶ教育を子どもや保護者の希望を尊重し展開する。」と掲げることにしました。そして,そのような教育を展開する中で,障害によって生ずる教育的ニーズに的確に対応した教育を行っていきたいと考えています。
この基本理念は,本県の障害児教育の目指すべき方向,障害児教育のあるべき姿を示したものであり,県教育委員会として,就学先の選択に関する子どもや保護者の希望を尊重しながら,障害のあるなしに関わらず,全ての子どもが地域の小・中学校で共に学ぶことができる教育を目指して,教育環境の整備を進めていくことを表現したものです。
基本理念実現のためには,全ての子どもの学び育つ機会を保障しながら,様々な条件整備,意識改革を進める必要がありますが,ハード面,ソフト面共に解決しなければならない課題が山積しています。当然,時間も要しますが,市町村教育委員会や関係機関等との連携を一層深め,段階的に,方向を間違うことなく進んでいきたいと考えています。

2この構想の性格

(イメージ図略)

○ この構想は,基本理念実現を目指しながら,そこに至るための今後10年間の施策の方向性を明らかにしようとするものです。

○ 構想の基本理念が目指す姿は,現在の障害児教育の在り方と大きく異なっており,基本理念実現のためには,現在の教育制度や県民の教育に関する考え方を大きく変えていく必要があります。そのため,国の教育制度の改正の状況や社会情勢を踏まえながら,長期間にわたって一歩一歩,段階を踏んで進んでいく必要があります。
また,現行の教育制度の下で,可能なところから実施していきたいと考えています。
実施に当たっては,障害のある児童生徒本人及び保護者の意向を尊重し,モデル的な取組等を通して,その成果と課題を検証しながら進めていきたいと考えています。

○ 構想の内容は,障害児教育の在り方を大きく変えるとともに,普通教育の在り方にも影響を与えるものと考えられることから,小・中学校の設置者である市町村教育委員会の理解なしには前に進みません。そのため,県教育委員会としては,市町村教育委員会の理解が得られるよう努めていきます。

○ この構想の対象としては,地域で共に学ぶということから,主として義務教育期間を想定しています。

※ 義務教育終了後については,地域で共に学ぶという視点も重要ですが,学校卒業後を見据えた障害のある生徒本人の適性に応じた進路選択という視点がより重要であることから,この構想の対象とはしておりません。

基本理念が目指す姿のイメージ

小・中学校の学齢期の全ての子どもたちは,基本的には地域の小・中学校に学籍を置き,障害のある子どもも含めて学級編制が行われます。

○ 障害のある子どもが在籍する学級には,必要に応じて教員が複数配置され,ティーム・ティーチングにより授業が行われます。

○ 介助等が必要な子どもが在籍する場合は,必要に応じて介助員等が配置されます。

○ 障害によって生ずる教育的ニーズに対応するために,「学習支援室」が設置され,必要に応じて専任の教員が配置されます。

※ 「学習支援室」には,必要に応じて障害児教育に関する専門的な知識,経験を有する教員が配置され,学校と障害のある子ども及びその保護者との合意の下,予め作成された個別の指導計画に基づき,一定の時間,その教室で特別の学習を行うことができるようになっています。
以上のように,障害のある子どもは,在籍する通常の学級と「学習支援室」で学習ができるような学習システムが確立されています。

○ 障害によって生ずる教育的ニーズは,極めて多様であり,そのような子どもたちの状態に応じた最適な発達支援を行うためには,専門的な障害児教育機関による支援システムが必要です。
そのため,各圏域には,盲・聾・養護学校の地域支援機能を強化した障害児教育の支援センターが設置され,各圏域の小・中学校に対し,教員の派遣や巡回指導等を行うなどの支援を行います。また,障害のある児童生徒は,小・中学校では行うことができない障害の特性に応じた専門的教育を一定期間受けることもできます。
さらに,専門的教員の育成を図るため,障害児教育機関による体系的な研修が行われます。

○ 障害によっては,医療や福祉分野等の専門的な支援も必要であり,これらの専門機関から,障害のある子どもやその保護者が必要な支援を受けられるよう,乳幼児期から成人期までの一貫した支援システムが整備されています。

(以下略)

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